はりは古代中国で発祥し、日本でも西洋医学による手術が発達する江戸時代後期~明治までは医療の中心として発達してきました。
しかしながら、やはりウイルスや感染症による疾患や出血を伴ったりするものにはどうすることもできないわけで、東洋医学が西洋医学に取って代わられることは当然であったと思います。
とはいえ、現代においてもその技術が生き残っているにはきちんとしたわけがあり、痛みや予防医学(未病治)の分野では目覚ましい効果をあげています。
たとえば、ぎっくり腰で地面をはうようにして来院された患者さんが、帰る頃にはすっかり良くなり自分で歩いて帰ったり、長年続いた腰痛がはりによって良くなった例もあります。
また、アメリカでは日本のように国民皆保険でないため個人で任意保険に加入しなければならないのですが、はりを日常的に受ける人は受けない人に比べて保険料を値下げしてもらえるメリットがあるなど、 予防医学の面においても大変注目されています。
※未病治とは読んで字の如く「未だ病成らざるを治す」という意味で、病気に至らないうちに、まだごく初期の段階でそのリスクを摘み取ってしまおうというものです。
当院のはりは全て使い捨てのディスポーサブル鍼を使用しており、はりによる感染症の心配はございませんので、安心して治療をうけていただけます。
きゅうは皮膚の上で手でひねったもぐさを燃やすことによって、温熱感覚を利用した方法で患部の血行を良くすることで血液内に様々な免疫物質を作ったり、(白血球の増加など)増血作用を促して機能を改善したり抵抗力を向上させたり効果があります。
きゅうによる刺激は東洋医学の考えの一つである『未病治』とも深い結びつきがあり、体質の改善や、身体に抵抗力を付けて病気を予防するものとしても良い効果が出ます。
以前はおきゅうを皮膚の上で完全に燃やしてやけどを作ることによって免疫効果を出していましたが、おきゅうの痕(あと)が残ったり、化膿したりすることがあるため、最近は8割ぐらい燃えたところでおきゅうを消して、おきゅうの暖かさのみを伝えるようにしているため、おきゅうの痕が残る心配はありません。
「本治法」と「標治法」、いずれもみなさん聞き慣れない言葉と思います。
本治法は身体全体のバランスの崩れを整えることを目的とし、バランスの崩れを整えると、本来の自然治癒能力が高まり、体内のあらゆる病気を修復する機能が活発に働くようになります。
標治法は、患部の症状に応じて行なう治療法で、例えば、痛むのであれば痛みを抑える、腫れているのであれば腫れを抑える、動かないのであれば動くようにするなどです。
標治法で痛みが取れるなどしても本治法をしていなければ、バランスは崩れたままですから、同じ痛みがまた出てきたり、別の病気が出てくることもあります。ですから、本治法で根本のバランスを整え、標治法で症状を抑えるという、2通りのアプローチを行なっていくのです。
2つの治療法が協力して同じ目的に向かって力を発揮すると、驚くほどの治療効果が現れることがあります。例えばギックリ腰のような急性の症状は標治法だけでも十分ですが、西洋医学的に原因が特定できない、不定愁訴が多い腰痛などのケースには本治法がとても有効になります。
「太極療法」とは大正から昭和初めに活躍された鍼灸師・澤田健先生が提唱された治療法です。
そのお弟子さんである代田文誌先生が著した「鍼灸眞髄」からの抜粋を掲載します。
病気というものは特別なものではなく、血の循環が不平均になった状態をいうのです。
人間の体には新陳代謝というて、日々に絶えず悪い所を治してゆく働きがある。
この力を利用するのであるから、これ以上の医術はない。
これはまさに大乗の療法というべきです。
人間の身体を栄養する血液の循環をよくするのが治療の目的です。
人間のもつてゐる力を活潑に働かせるのが第一の医学。
つまり、人間の体には自分で治ろうとする力が多かれ少なかれ存在していて、それが強ければ病気にならずにすみますし、弱ければ様々な病気になってしまします。
太極療法はその治ろうとする力をはりきゅうによって引き出そうというものです。
例として、西洋医学では風邪を引いた時、薬という自分の体にはないものを加えることによって風邪という症状を治そうとしますね。しかし、元々自分の体に無いものを加えるので時として副作用が起こることがあります。
これに対してはりきゅう(東洋医学)は元々人が持っている治ろうとする力を引き出すことによって風邪という症状を治していきます。元々自分の体にあるものだから副作用は起こりません。
我々治療家は、あくまで皆様が元々持っている治ろうとする力を引き出すお手伝いをさせていただいているのです。